このたびの大分市佐賀関地区での大規模火災により被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
大規模火災のニュースを目にするたびに、「もし自分の住む地域で起きたら」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
こうした火災は決して特別な出来事ではありません。
私たちの暮らす地域の状況を統計データで見てみると、令和5年(2023年)、人口1万人あたりの出火件数(出火率)の上位は次の通りです。
茨城県:4.81件/1万人
山梨県:4.61件
大分県:4.57件
栃木県:4.51件
山口県:4.43件
今回、大分県大分市佐賀関地区で発生した大規模火災では、170棟以上に被害が及びました。
主な要因は複数ありますが、以下の点が重なったと考えられています。
1. 初期消火の遅れ・人がいないことで対応できない
火災初期には、住人による気づきや初期消火・通報・避難誘導が効果を発揮しますが、空き家では人がいないため、この段階がほぼ機能しません。
報道では「例えば飛び火したとしても、初期消火は人がいないとできない。延焼リスクは空き家率が大きければ大きいほど恐れが大きくなる」と専門家が指摘しています。
また、現地は住宅密集地で狭い路地が多く、夜間の消火活動は危険を伴い、消防車両の接近や活動も難しい状況だったとの報告もあります。
2. 建物自体の老朽化・構造の火災脆弱性
市の担当者は「佐賀関は木造の空き家が多い。改修されず、木造の外壁などは風化が進みやすく、耐火性も低いのではないか」と述べています。
要するに、住まわれていない建物は定期的なメンテナンスや防火措置がなされにくく、火災に対する備えが弱かったと言えます。
3. 火の拡散条件が悪かった
さらに、気象・地理的条件も影響しました。発生時には強風や乾燥が確認され、細い道や密集住宅地が火の広がりを助長したとされています。
空き家が燃えたことで「燃えやすい経路」ができ、そのうえで強風が加われば火の粉は飛び、延焼が一気に広がった可能性があります。
以上のように、空き家は「人がいない」「建物が脆弱」「燃えやすい経路」という三重苦を抱え、火災の拡大に“入口”として機能してしまったと読み取れます。
私たちが今後備えるべきこと
では、地域住民・自治体・建物所有者それぞれがどのように備えておくべきか、いくつかのポイントを挙げます。
● 所有・管理者としての空き家対策
空き家を所有している場合は、定期的な点検・メンテナンスを行い、老朽化した木造家屋であれば防火対策(外壁・屋根の材料見直し、庭先の可燃物撤去など)を検討すべきです。
利用できない場合は、解体や除却を検討することも選択肢です。
● 地域コミュニティ・自治体との連携
地域で「誰も住んでいない建物」の存在を共有し、火災が起きた際のリスクマッピングをおこなうことが大切です。
特に住宅密集地や狭あい道路の多い地域では、防火帯の確保や通報・避難ルートの見直しも重要です。
● 日常の防火・減災意識の醸成
「空き家だから大丈夫」と思わず、風の強い・乾燥した日には火の取り扱いを慎重にし、「燃えやすい構造」「周囲の可燃物の有無」に、住む・住まないに関わらず目を向けることが必要です。
報道では「枯れ草や空き家が小さな火災を延焼経路にしてしまう」危険性が指摘されています。
● 消防・行政との防災インフラ構築
消防車両が進入困難な地域では、自治会・住民による自主消火設備(消火器・散水栓など)の整備、避難誘導訓練、火災発生時の迅速な通報手段の確認などが求められます。
実家を相続したけれど、しばらく戻れず、そのまま──。そんな状況は、誰にとっても“起こりうる話”です。突然、その日はやってきます。
近所の空き家化や高齢化も、自分ひとりではどうにもできないことですが、自分の家や実家について「いま何ができるか」を一度考えてみませんか。
空き家と火災の問題を「自分には関係ない」と切り離さず、ほんの少しでも意識を向けてみましょう。そんな小さな意識の変化が、将来のリスクを少しでも減らすきっかけになるかもしれません。





