2025年7月23日、トランプ大統領による日米関税交渉が合意に至りました。それによって日本の株価が上昇したことには、やや違和感を覚えます。もともと追加関税が25%から15%に下がったことに「ひと安心」という声があるのは理解できますが、数式の上では依然として“プラス15%”です。景気とは「気分の景色」であることを、改めて実感させられる出来事だったのではないでしょうか。
“ウッドショック”が再来する可能性!?
関税が15%になることにより、今後、あの“ウッドショック”が再来する可能性はないのでしょうか。ウッドショックとは、2020年のコロナ禍において発生した木材価格の急騰です。海上輸送のコンテナ不足や人手不足によって輸入木材の調達が困難となり、さらにアメリカ国内の在宅需要による住宅バブルで木材需要が急増。加えて、各国の温暖化対策による原木輸出の規制も重なり、日本の輸入木材価格が高騰しました。その影響で国産材の需要も一気に高まり、木材全体の価格が異常に上昇しました。
日本の住宅建築現場への影響
結果として、工事内容の変更を余儀なくされたケースもありました。当初の契約金額では工事を完了できず、追加請求が発生し、ローン金額が増加したことで返済負担が重くなった例もあります。さらに、木材の調達遅れによる納期の延長によって、仮住まいの家賃も増え、延長した分を支払わざるを得なかった人もいました。
コスト高の波、ふたたび
今回の相互関税により、第二次ウッドショックが起きる懸念があります。日本では、住宅建築に欠かせないツーバイフォー材など加工木材の多くをアメリカから輸入しています。そのため、価格や供給の変動は、住宅コストに影響を及ぼす可能性があります。日本がアメリカの関税に対抗し、米国からの輸入木材に15%の報復関税をかければ、原材料費が上昇します。アメリカからの輸入製品には、木材や住宅の構造材だけでなく、合板やサッシ、フローリング材、内装材、建築金物といった仕上げ材も含まれます。関税の上昇や為替の変動が、住宅設備費に間接的な影響を与える可能性があります。
日本の住宅設備メーカーへの波及
一方で、トイレや浴室設備などの輸出に強みを持つ日本の住宅設備メーカーでは、海外売上比率が25~30%に達している企業もあります。こうした企業の利益が関税や為替の影響で圧迫されれば、国内販売価格の見直しにつながるおそれもあります。国内総生産への影響は、当初5.1兆円とされていたものが3.3兆円まで縮小する見通しですが、それでも景気後退につながれば、賃上げムードに水を差し、給料が下がる一方で、物価は上がるという悪循環を招きかねません。
こうした景色が変わってしまう前に、状況を見極めながら価格の変動に備え、この機会に、少し早めに検討してみませんか。