住まいと暮らしのQ&A

トランプ政権の影響が住宅市場に及ぼすもの。経済の不確実性と私たちの暮らし

トランプ大統領が2期目に就任してから、およそ100日が経過しました(2025年5月現在)。CNNの世論調査によると、就任100日での支持率は歴代大統領の中で最低と報道されましたが、本人は「フェイクニュース」と一蹴し、「最も素晴らしい100日間のスタートだ」と述べました。この間に署名した大統領令や覚書などは142にも上り、その影響で世界が大きく振り回されています。

株価と投資への影響

特に注目されているのが関税措置です。身内からも「アメリカ経済にとって巨大なリスク」と言われるほどで、来年の中間選挙では共和党が惨敗するのではないかとの見方もあります。こうした動きは世界の株式市場を混乱させ、株価が大きく下落しました。新型NISAをきっかけに投資を始めた人々にとっても落胆は大きく、順調だった全世界株式、いわゆる「オルカン」のつみたて投資も、現在は含み損を抱える状況です。今後もトランプ大統領の一言で市場の見通しが大きく変わる可能性があります。

日本の住宅ローン金利への波及

では、日本の住宅ローン金利はどうなるのでしょうか。トランプ大統領による相互関税の影響で、日本銀行が利上げを継続できなくなる可能性があり、逆に景気後退を背景に利下げを迫られる可能性すらあります。今後、政策金利の利上げがストップしても、民間銀行の変動金利は1月に行われた日銀の利上げによって一時的に上昇しました。一方で、相互関税の影響で長期金利が低下すれば、固定金利は下がると見られます。

建築資材と為替の影響

さらに、鉄鋼、木材、設備機器などの建築資材に関税がかかれば、資材価格が高騰し、住宅価格が上昇する可能性があります。ただし、ドル高の是正によって為替が円高に向かえば、輸入コストが下がり、結果として建設資材コストが抑えられるかもしれません。

エネルギー価格と建築コスト

また、発電所に必要なエネルギー資源である原油、LNG、石炭などの価格が高騰すれば、電気代が上昇し、設備機器の製造コストにも影響を与えます。これが価格転嫁につながれば、住宅価格への影響も避けられません。ガソリン代の上昇は輸送費や建設作業員の移動コストにも影響し、建築費の高騰要因となります。

レアメタルとサプライチェーンのリスク

中国との間で報復関税の応酬が続き、貿易戦争に発展すれば、産業界全体を揺るがす事態になります。特に中国は、世界のレアアース供給の約90%を担っており、採掘から加工、さらに永久磁石の製造まで、サプライチェーン全体を掌握しています。トランプ大統領がウクライナのレアメタル権益に関心を示した背景には、そうした中国依存からの脱却があったのかもしれません。しかし、ロシアとの戦争と絡み合う中で、その思惑どおりには進んでいません。レアメタルを使用する製品の供給が滞れば、納期遅延にもつながります。その後の活用については、アメリカ国内の精製や製品化の体制に課題が残るとも言われており、資源を確保してもスムーズに活用できるかどうかは不透明です。

アメリカ住宅市場と日本への示唆

アメリカでは人口の増加によって住宅供給が不足し、住宅は今も成長産業とされ、日本のハウスメーカーも進出しています。しかし、今回のトランプ関税政策の影響で、それらの企業も巻き込まれる懸念があります。すでにアメリカの住宅ローン金利は7%台と、日本のバブル期を彷彿とさせる水準に達しています。こうした状況下で、住宅市場への不安が強まっています。では、日本の住宅市場はどうでしょうか。為替や資材コストの変動、海外情勢の影響、そして金利動向が住宅価格や取得計画にどのように波及するのか、今後も注視していく必要がありそうです。